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スズメバチってどんな生き物?

夏から秋にかけて、危険な生物として身近なものになるスズメバチ。

見かけることはあっても、詳しく知る機会は少ない相手ではないでしょうか。

今回は、そんなスズメバチの生態について、ご紹介してみたいと思います。

1. スズメバチとはどんな昆虫?

スズメバチは、ハチ科の昆虫の中でも特に大きなものが多く、力強い捕食者です。

スズメバチは、世界中に多くの種類が存在し、日本にも数種類のスズメバチが生息しています。

中でも有名なものとしては、「オオスズメバチ」や「キイロスズメバチ」といった種類。

家の軒下などに巨大な丸い巣を作っているものの多くは「キイロスズメバチ」で、見た目にも恐ろしいと直感できるような、巨大な体を誇るのが「オオスズメバチ」です。

天井裏に作られていたキイロスズメバチの巣

軒下に作られていたキイロスズメバチの巣

大きい方は去年以前の巣でした

いずれも身近な環境にいる上、非常に凶暴で、人が刺されてしまうハチの代表格。

これらのハチは、時に人間の生活圏にも現れることがあり、彼らの巣が人の家の近くや家そのものに作られることも少なくありません。

スズメバチは昆虫の中でも非常に強力な存在で、他の昆虫を捕まえて食べる、虫の中では食物連鎖の上位に位置します。

また、スズメバチは成虫の栄養分として植物の蜜を摂取するケースもありますが、基本的には肉食性が強い昆虫です。

特に、彼らの顎(あご)はとても発達しており、獲物をしっかりと捕まえ、噛み砕くことが可能。

さらに痛みを与えるだけではなく、動物の体を構成しているたんぱく質をも分解する強力な毒を注入できる針も備えています。

この強力な顎と毒、攻撃的な性格から、スズメバチは他の昆虫や動物だけでなく、人間にとっても恐ろしい存在なのです。

1.1 スズメバチの特徴的な活動時期

スズメバチは春から秋にかけて活動が活発になります。

春先は女王バチのみで巣作りを行っていたり、働きバチが少数の間はあまり活動が目立ちにくいのですが、夏を過ぎると働きバチの数も増えてくるため、人間と接触してしまうケースも増える傾向に。

特に夏の終わりから秋にかけては、彼らの巣が非常に大きくなり、働きバチの数も爆発的に増加します。

この時期には、スズメバチは非常に攻撃的になり、巣に近づくものに対して鋭い針を使って刺してくることがあります。

わずかな刺激でも攻撃を仕掛けてくる可能性が高くなりますので、スズメバチの巣を見つけた際は、絶対に近づかないようにしましょう。

スズメバチの刺し傷は非常に痛みがひどいばかりではなく、時にはアナフィラキシーショックという重篤なアレルギー反応を引き起こすこともあります。

刺された場所の痛みや腫れだけが症状として出ている場合でも、すぐに医師の診察を受けることが重要です。

特に、刺された場所以外で異常が起きた時(めまい、頭痛、吐き気、呼吸が苦しいなど)があった際は、アナフィラキシーショックの発生が考えられますので、一刻を争う状態と判断し、迷わず救急車を依頼してください。

 2. スズメバチはどんな社会を作るのか?

スズメバチは「社会性昆虫」と呼ばれる種類に分類されます。

これは、スズメバチが単独で生活するのではなく、コロニー(集団)を作り、協力して生活していることを意味します。

この社会構造は非常に複雑で、スズメバチのコロニーは女王蜂を中心に、働きバチや雄バチ、新たな女王蜂などがそれぞれの役割を持ちながら生活しています。

 2.1 女王蜂

スズメバチのコロニーを率いるのが、唯一の繁殖可能なメスである「女王蜂」です。

女王蜂は、一年のサイクルを通じて新しいコロニーを作り、その成長を支えます。

春になると、冬眠から目覚めた女王蜂は、新しい巣を作り始めます。

巣作りを始めたばかりの女王蜂は一人で作業を行い、自らが産んだ卵から孵った幼虫に餌を与えます。

この時期の女王バチは、何とかして働きバチを育て、巣を作ることを成功させなければなりませんから、よほどのことが無い限り、人間に興味を示したりしません。

駆除してしまうなら、この時期が最も有利な時期といえるでしょう。

最初の卵が生みつけられてから時間が経つと、最初の働きバチが成虫となり、女王蜂はその後は産卵に力を注ぐようになります。

これにより、巣作りや餌集めといった作業は基本的に働きバチへ任されることになります。

女王蜂は巣の中で安定した環境で卵を産み続け、子孫を反映させてコロニーを拡大させることに全力を注ぎます。

女王蜂の寿命は一般的に1年程度ですが、次の女王蜂が生まれると、その女王が新しい巣を作るために飛び立ち、古い女王蜂は死ぬかコロニーから追放されることがあります。

 2.2 働きバチ

働きバチは、女王蜂が産んだ受精卵から孵化したメスです。

彼らの役割は非常に多岐にわたり、巣を拡張し、幼虫に餌を与え、外敵から巣を守るなど、多くの重要な作業を行います。

働きバチは一匹一匹が非常に勤勉であり、多くの種類が夜間の飛行を上手くできない性質があるため、夜に飛ぶことは少なくなりますが、巣の中を含めると昼夜を問わず働き続けます。

特に、夏から秋にかけての期間は巣を守るために非常に攻撃的になり、外敵が近づくとすぐに警戒し、攻撃を仕掛けます。

働きバチは主に幼虫に餌を与えるために、他の昆虫やその幼虫を捕まえて持ち帰ります。

また、スズメバチの幼虫は肉食性であり、植物の蜜だけではなく、動物のたんぱく質を必要とします。

成長に必要な要素であることはもちろんですが、腰が非常に細くくびれているため、直接液体以外の食べ物を食べることができない働きバチの栄養を作り出すためにも、非常に重要。

幼虫は食べ物を分解し、養分を含んだ液体として働きバチに供給する役割も担っているのです。

そのため、働きバチは昆虫などの小さな動物を探し回り、それらを巣に持ち帰って幼虫に与えます。

 2.3 雄バチと新しい女王蜂

秋になると、女王蜂は雄バチと新しい女王バチを産み始めます。

いずれも多数(種類によりますが、キイロスズメバチの場合は200頭以上と言われています)を出産し、翌年の種族繁栄のための準備を行うのです。

雄バチは、交尾のためだけに存在し、働きバチのように巣作りや餌集めなどの役割を担うことはありません。

雄バチは交尾が終わると、冬が来る前に寿命を迎え死んでしまいます。

一方、新しい女王蜂は交尾を済ませると、冬眠に入り、翌年の春になると新たな巣を作るために活動を再開します。

このようにして、スズメバチのコロニーは毎年新しい女王蜂によって再生されるサイクルを繰り返します。

 3. スズメバチの巣とその構造

スズメバチの巣は非常に特徴的な構造を持っています。

巣は六角形の部屋がたくさん集まった「セル」と呼ばれる小さな部屋から成り立っており、それぞれのセルに卵が産み付けられます。

セルは非常に丈夫な素材でできており、スズメバチは木の皮や枯れ葉などの植物の繊維を噛み砕いて唾液と混ぜ合わせ、紙のような素材を作り出します。

この素材を使って巣を拡張していきます。

 3.1 巣の内部構造

スズメバチの巣は、外側から見ると多くの場合ボールのような形(一部のスズメバチは円筒に近い形)をしていますが、内部は非常に整然とした構造になっています。

巣の内部にはいくつもの「層」があり、それぞれの層を「巣版」と呼びます。

それぞれの巣版には無数のセルが並んでいます。

小型スズメバチの作りかけ(改築途中)の巣

多数の巣版にセルが並んでいることがわかります

各層は、巣の中心に近い部分から外側に向かって徐々に大きくなっていきます。

これは、巣が成長するにつれて新しい層が追加され、巣全体が拡大していくためです。

各セルには卵が一つずつ産み付けられ、卵が孵化すると幼虫がその中で成長します。

働きバチは、幼虫に餌を与え、成長をサポートします。

幼虫が成長し、成虫になると、セルから出て働きバチとしての役割を果たすようになります。

 3.2 巣の素材と作り方

スズメバチは巣作りに木の繊維や植物の枯れ葉を使用します。

彼らは、これらの素材を噛み砕き、唾液と混ぜ合わせることで、非常に丈夫で柔軟な紙のような素材を作り出します。

この素材を使って巣を拡張し、新しい層やセルを作り上げていきます。

巣の成長は、女王蜂が産む卵の数に依存しており、働きバチの数が増えるとともに巣も大きくなります。

巣作りの初期段階では女王蜂が一人で作業を行いますが、働きバチが生まれると、その作業は彼らに引き継がれ、巣の拡張が加速します。

スズメバチの巣は非常に精巧で、風や雨といった自然の力にも耐えることができます。

彼らは、巣を外敵から守るために、巣の入口を狭くし、巣の内部は空気が通りやすい構造になっています。

4. スズメバチが巣を作る場所

スズメバチは、巣を作る場所を非常に慎重に選びます。

彼らは巣を安全な場所に作ることで、外敵や人間から身を守り、巣を拡大していくことができます。

 4.1 木の上や軒下

スズメバチは、主に木の枝や建物の軒下など、高い場所に巣を作ることが多く見られます。

キイロスズメバチは軒下などで巨大な巣をかけることが多くありますし、コガタスズメバチは樹木の中に巣をかけているケースが頻繁にあります。

 4.2 屋根裏や床下などの隠れた場所

8月までのキイロスズメバチでよく見られますが、建物の中に巣を作り、通気口などから出入りしているケースです。

働きバチが増えるまで目立ちにくく、気づいたときには働きバチが500匹を超える大群となっている場合も多くあります。

最終的に1年を通して誰も気づかなかったというケースもあり、屋根裏に大量の巣が放置されたままになっているご家庭に伺うこともあります。

屋根裏に大量の蜂の巣が残されていた例です

同一のお宅ですが、他にもあって、数でいうと10個の巣を撤去しました

 4.3 地中に作る巣

スズメバチの中には、地上ではなく地面に巣を作る種類も存在します。

例えば、スズメバチでも最強の攻撃性と毒の強力さを誇る「オオスズメバチ」などは、柔らかい土を掘り、地下に巣を構築するケースが多く見られます。

彼らは地中の隙間や、木の根元などに巣を作ることが多く、地上に巣を作る種類と比べて外敵から身を守りやすい環境です。

しかし、これらの巣は人間の目には見えづらく、気づかずに踏んでしまうことがあります。

特に、草地や公園などで知らないうちにスズメバチの巣を踏んでしまうと、突然攻撃されることがあるので、注意が必要です。

  4.4 巣を作るための環境の選び方

スズメバチは巣を作る場所を慎重に選びます。

彼らは巣を守りやすく、外敵からの攻撃を避けられる場所を探し、巣を作り始めます。

スズメバチは特に、人や動物の活動が少ない場所を好みます。

また、巣の場所は外敵に見えにくい場所や、風雨に耐えられる場所が選ばれます。

木の高いところや、軒下、時には地中に巣を作るのも、このためです。

巣が完成すると、スズメバチたちはその周辺を警戒し、侵入者に対してすぐに攻撃を仕掛けることがあります。

特に、巣の近くに大きな動きがあると、スズメバチはすぐに反応します。

これは、彼らの巣を守る本能からくる行動であり、他のハチや昆虫が巣に近づかないようにするためなのです。

また、スズメバチは巣を作る際に、周囲の気温や湿度、風の強さも考慮します。

風通しのよい場所に巣を作ることで、内部の温度や湿度を適切に保ち、幼虫の成長を助けます。

風が強すぎたり、直射日光が強い場所では、巣が壊れてしまったり、高温のために幼虫が成長できなくなったりと、本来の目的である繁殖が上手くできなくなってしまう可能性もありえます。

そのため、彼らは常に周囲の環境に気を配り、最適な場所を選ぶのです。

 5. スズメバチの繁殖サイクル

スズメバチの繁殖サイクルは非常に規則的で、1年ごとに新しい世代が誕生します。

彼らの繁殖サイクルを理解することは、スズメバチの行動や、なぜ特定の時期に彼らが攻撃的になるのかを知る手がかりとなります。

 5.1 春から夏の活動開始

冬が終わり、春になると、冬眠していた女王蜂が活動を再開します。

冬の間は、前年に交尾した女王蜂だけが生き残り、風雨などにさらされる巣は、崩れて落ちてしまいます。

女王蜂は、活動が可能な気温になったと判断すると、巣作りを始めるための適切な場所を探し始めます。

最初は、女王蜂一匹だけで巣を作り始め、数個の卵を産み付けます。

この時点で、女王蜂は自分自身で卵を世話し、幼虫に餌を与えます。

やがて、卵が孵化して働きバチが誕生すると、女王蜂は巣作りの作業から解放され、産卵に専念するようになります。

この段階では、ごく少数のハチが存在するだけですので、目立つこともありませんし、巣を発見できる可能性も低いものとなるでしょう。

 5.2 夏から秋にかけての繁殖拡大

夏になると、コロニーは急速に拡大していきます。

働きバチの数が増えるとともに、巣の規模も大きくなり、さらに多くの卵が産み付けられます。

この時期、スズメバチは非常に活発に活動し、餌を探して長距離を飛び回るようになります。

住宅に巣を作られていた場合、住民の方がよく気づかれるタイミングとなるのも、この頃が多くなるでしょう。

働きバチは、他の昆虫や果物の汁などを集めて巣に持ち帰り、幼虫や女王蜂に与えます。

特に、スズメバチはこの時期に攻撃的になることが多く、巣に近づくものに対して鋭い警戒心を示します。

夏の終わりから秋にかけては、スズメバチのコロニーが最大の規模に達するため、巣の周囲を守るための防衛行動も強化されます。

この時期は、スズメバチによる刺傷事故が最も多くなる時期でもあるため、巣を見つけた際は決して近づかないようにし、誰かが事故の犠牲になる前に専門家である駆除業者に相談しましょう。

 5.3 秋の終わりから冬への準備

秋になると、女王蜂は新しい女王蜂や雄バチを産み始めます。

この新しい女王蜂たちは、翌年の春に向けて交尾をし、その後は冬眠に入ります。一方、雄バチは交尾を終えると冬が来る前に死んでしまいます。

スズメバチの巣は、冬になると風雨にさらされる場所では自然に崩壊し、働きバチや古い女王蜂も死んでしまいます。

冬を越えることができるのは、交尾を終えた新しい女王蜂だけです。

彼女たちは、春まで木の隙間や地面の中で冬眠し、次の春に新しい巣を作るために活動を再開します。

 6. スズメバチの生態系への影響

人間にとって脅威となるスズメバチではありますが、自然界において非常に重要な役割を果たしています。

彼らは捕食者として、他の昆虫を食べることで生態系のバランスを保っています。

また、スズメバチの幼虫は、動物性たんぱく質を必要とするため、彼らが捕まえる昆虫の数は非常に多く、これが他の昆虫の数を調整し、生態系バランスの維持に貢献しています。

 6.1 捕食者としての役割

スズメバチは、特に他の昆虫を捕まえて食べることで知られています。

彼らは主に肉食性で、バッタやカブトムシの幼虫、ハエ、チョウなど、さまざまな種類の昆虫を捕食します。

スズメバチの鋭い顎と素早い飛行能力は、彼らが効率よく獲物を捕まえるのに役立っています。

特に、彼らの視覚は動くものを捉えるのに非常に優れており、飛んでいる昆虫を見つけて追いかけ、捕まえることができます。

まさに昆虫界のハンターと言えるでしょう。

スズメバチの捕食活動は、他の昆虫の個体数を抑えるのに貢献しており、これが生態系全体のバランスを保つのに役立っています。

例えば、害虫となる昆虫を大量に捕食することで、農作物への被害を抑える効果も期待できます。

スズメバチが存在することで、農業の営農業務や自然環境の健全さを維持する一翼を担っているのです。

 6.2 花粉媒介者としての役割

スズメバチは、捕食者であると同時に、花の蜜を摂取することもあります。

特に、夏の終わりから秋にかけては、果物や花の蜜を求めて飛び回ることが多くなります。

このとき、スズメバチが花から花へと移動することで、花粉の媒介者としての役割を果たすことがあります。

スズメバチが花粉を運ぶことは、ミツバチほどの重要性はないかもしれませんが、それでも彼らが植物の繁殖に関与していることは事実です。

花粉の媒介を行うことで、植物の繁殖を助け、植物群落の多様性を保つのに貢献しています。

 6.3 他の動物への影響

スズメバチは、その強力な捕食力や攻撃力から、他の昆虫や小動物にとっては大きな脅威です。

彼らは獲物を捕まえる際に、獲物を素早く仕留め、その体を巣に持ち帰って幼虫に与えます。

これにより、スズメバチは他の昆虫の個体数を制御し、生態系のバランスを保つ役割を果たしています。

また、スズメバチは他のハチやアリ、さらにはミツバチの巣を襲撃することもあります。

特に、オオスズメバチはミツバチの巣を襲い、ミツバチの幼虫を食料として持ち帰ることが知られています。

これはミツバチの生態に大きな影響を与えることがありますが、同時にスズメバチも自然の一部としてその役割を果たしていると言えるでしょう。

 まとめ

スズメバチは、非常に複雑で興味深い生態を持つ昆虫です。

彼らは女王蜂を中心にした社会性昆虫であり、1年ごとに新しい世代を生み出しながら生息しています。

彼らの巣作りや繁殖行動、そして捕食者としての役割は、自然界において重要な意味を持っています。

また、スズメバチは生態系のバランスを保つために必要不可欠な存在であり、害虫の数を抑えたり、花粉の媒介を行うなど、多くの役割を担っています。

スズメバチについて学ぶことで、彼らの生態系への貢献やその生活サイクルを理解し、自然界におけるスズメバチの重要性に気づくことができます。

彼らの活動に注意しながら、自然の一部として尊重し、本来なら共存することが大切です。

しかし、人間の生活するエリアに関わってきた場合、その攻撃力が人間に向けられてしまうことも考えられるのは問題。

危険と判断したら、駆除することも必要です。

一般の方がハチの駆除を行うのは大変危険が伴いますので、専門業者に依頼してくださいね。

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